海上自衛隊の幹部自衛官が、部署を転々とする理由

 自衛隊の食事とは関係のない話題です。
「兵士に聞け」を読んでいると、海上自衛隊の艦艇内で、新しく配属になった幹部自衛官がおかしな命令を出して、部下である曹士隊員が困るみたいな記述がありました。
 海自の幹部自衛官は、部署を数年ごとに転々とするようです。
 なぜ部署を転々とするのか。
 ようやく馴染んできた頃にまた新しい部署に異動してしまうのはなぜなのか。

 本によれば、護衛艦がもし攻撃を受け、部署のひとつが全滅に近い打撃を受けたとする。
 ほかの部署から人員が応援に行くわけですが、そのときにその打撃を受けた部署のことを分かっている人間がいないと、護衛艦はその能力を発揮できない。
 戦闘や、不測の事態に備えて、幹部自衛官は、艦艇のあらゆる箇所に精通していなければならない ――とのことでした。

 上記について、とある3佐の海上自衛官にお聞きにしたところ――
 自著からですが、引用します。

「○○三佐はずっと広報の仕事をされている訳じゃないんですよね?」
「自分はマーク(職種)は艦艇なんですよ。専門は水雷ですけど」
「水雷というと、魚雷ですか?」
「そうです。魚雷などの水中武器系の取り扱いです。ソーナーで、潜水艦の捜索などもしますね」
 一部省略。
「本で読んだんですが、海上自衛隊の艦艇勤務の幹部は、色々な部署を少しずつ覚えるらしいですね」と私は尋ねた。
「そうですね。一般幹部候補生を修業した艦艇乗り組み幹部は、最初の三年間は、専門関係なく様々な部署を経験します。そのあと、専門が決まります」
「ある本によると、護衛艦は、戦闘で人員に欠員が出たりして、たとえばひとつの部署が全滅したときに備えて、機器の取り扱いの分かる幹部を分散させている、というふうに読んだんですが、本当ですか?」
 少し長いが『兵士に聞け』(新潮社)杉山隆男著から引用する。

 護衛艦の若手士官が仕事の中身をくるくるかえさせられるのにはむろんわけがある。それは、護衛艦が敵からの攻撃をうけてたった一人の士官しか生き残っていないという事態になってもなお艦を動かし兵を率いて戦うことができるようにしておくためである。戦闘部署の士官が全滅する中、たとえ航海長や機関長だけが難を逃れても、その彼らがミサイルや魚雷の扱いをまったく知らないというのでは戦闘の指揮をとる人間がいなくなってしまう。逆に兵器関係の士官が生き残っても、船の操り方が分からないようでは護衛艦は艦隊からはぐれて洋上をさまようことにもなりかねない。つまり士官の中の誰が敵弾に斃(たお)れても、ただちに生き残った士官が代役をつとめられるように、護衛艦の士官はある程度「何でも屋」であることが求められるわけだ。
『兵士に聞け』(新潮社)杉山隆男著二二〇ページより

 ○○三佐は一瞬考え込んでから口を開いた。「確かにそういう事態に備えている部分もありますが、艦長になったとき、たとえば機関や航海などの部署のことが分からないと……配慮ができないですよね。艦長は、艦全体を把握しないといけないので」
「なるほど。そんな理由もあるんですね」

 引用終わり。
 部署を転々とする理由ですが、どちらかというと、艦長になるための通過儀礼みたいなニュアンスでした。
 年代や場所によっても変わってくるかもしれません。

 民間の会社でも同じかなと思います。
 私は15年ほど飲食店の厨房で働きましたが、店長はキッチン業務に暗かったので苦労した覚えがあります。

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